ヘルメットは、バイクで走行する上での必需品である。バイクの走行においてヘルメットを使用する目的は、ライダーの安全を確保することである。万が一の転倒や不慮の事故、また飛び石や風雨からも保護してくれる。頭部を保護するだけでなく、時には生命そのものを保護する大切な役割がある。最近ではファッション性を重視したヘルメットが増えているが、ヘルメットをかぶる目的を考えたとき、選択の第一のポイントとするべきことは、安全性の面である。バイクの排気量や使用状況などに応じて適切なヘルメットを選択することが大切である。 また、着用する時は、万が一の時にも脱げないようにきちんとあごひもを締め、正しく着用しなければその役割を果たさない。帽子のように頭にのせただけのものでは、ヘルメットの機能を全く果たさず、かえって安全の妨げとなる。 ヘルメットの着用については、道路交通法でもきちんと定められている。公道を自動二輪車および原動機付自転車で走行する場合、ヘルメットの装着義務がある。ピザの配達などで使用されている屋根のあるバイクなどの場合も、例外ではない。また、十分な視界が確保でき、視界を妨げない構造であること。周囲の音が聞こえること。衝撃に強く、脱げないようにあごひもがあること。2キログラム以下の重さであることなども、定められている。上記のとおり法律で定められているように、ライダーの安全を守るためには、ヘルメットの着用は必須である。 公道ではない場所でヘルメットの着用を怠っても、法律には触れないが、たいへん危険な行為であることは、ライダー自身が自覚を持たなければならないことである。
主な日本のヘルメットの規格は、次のとおりである。 ■SG規格PSCマーク・SG規格PSCマーク(125cc以下) これは、ヘルメットの安全性を証明する規格ではなく、単にバイク用のヘルメットであることを証明するものである。日本国内では、このSG規格に認定されていないと、バイク用ヘルメットとしての販売は認められない。ただし、国家公安委員会によって推奨されているが、強制ではない。 ■JIS(日本工業規格) 日本工業規格におけるヘルメットに関しての規格は、「乗車用安全帽」についての規格が設けられている。現在適用されているJIS2000は、過去に制定されたJIS規格のB種、C種を統合したものであり、安全性の面で最も信頼できるとされている。こちらも国家公安委員会によって推奨はされているが、強制ではない。しかしJIS2000(125cc以下)については、125ccを超える排気量のバイクで使用し、事故が発生した場合、法的な保護は受けられない可能性がある。 ■SNELL規格 国際的な規格であり、日本での法的な効力はない。しかし、その安全基準は5年ごとに改正されており、安全性の高さでは信頼を得ている。一方、その規格にパスするには、現時点のSNELL規格よりさらに厳しい基準に達したヘルメットを製造しなければならないことになる。SNELL規格は、1957年に設立された「スネル財団」が定めたものである。レーサーだったビート・スネル氏が、レース中に起こした事故で、ヘルメットを被っていたにもかかわらずその機能を果たさず死亡したことから、財団が設立された。誰にでもヘルメットの安全性を判断できるようにと規格を定めたのが、その始まりである。 ■アライ規格 株式会社アライヘルメットが独自に設けた規格。SNELL規格よりきびしく設定されている。
ヘルメットには、おわん形のハーフ型(半キャップ型)、耳をカバーするスリークォーターズ型、あごの部分がオープンになっているジェット型(またはオープンフェイス型)、そしてフルフェイス型がある。メーカーによって、呼び名が変わる場合があるが、形状としてはこの4タイプである。 使用するときは、バイクの大きさ(排気量)や利用状況、ライディングスタイルなどによって、選びたい。中型・大型バイクに乗車するときには、オープンフェイス型、フルフェイス型のヘルメットを使用、ハーフ型、スリークォーターズ型は125cc以下のバイクに乗車するときに使用することが多いようだ。 ヘルメット自体にも、用途が表示してある場合がある。125cc以下用と表示されているヘルメットは、中型・大型のバイクでは使用できないので注意が必要である。 また最近は、ファッション性を重視したヘルメットも見かける。スポーツ走行などではもちろん、日常の走行においても、安全性の面で不安が感じられる。フルフェイス型のヘルメットが、安全面では一番すぐれているので、できれば原付やスクーターの場合もフルフェイス型のヘルメットが安心できる。しかし、価格やバイクのタイプに合せて選ぶ時には、ファッション性よりも安全を重視して選ぶほうがよい。
ヘルメットの外装は、排気ガスを浴びてかなり汚れやすい。また内装も、とくにフルフェイスの場合は、直接髪や皮膚に触れるので、汗などの匂いもつきやすい。また、フルフェイスやジェットヘルの顔面を覆うシールドの汚れは、視界に影響するので、こまめに手入れしておくことが必要である。 外装は、バイク用品店に行けば専用洗剤も売られているが、中性洗剤を薄めたものでも十分きれいになる。汚れをふき取ったあと、さらに美しく仕上げたい場合は、専用ワックスをかける。ベンジンなどの有機溶剤は、材質を溶解する恐れがあるので、決して使わないこと。 内装は、取り外せるものは取り外して、中性洗剤で軽くもみ洗いし、陰干しする。取り外せないものも、中性洗剤を薄めたものをタオルに浸してかたく絞り、ふく。匂いが気になる場合は、消臭スプレーなどを使用する。また、消毒用アルコールをスプレーしてもよい。この場合もヘルメットの内部が乾燥するように、風通しのよい日陰で乾かす。 シールドの手入れは、もっとも重要である。シールドも専用クリーナーが市販されているが、中性洗剤をティッシュペーパーで広げてふき取るだけできれいになる。ただし、あまり強くこすると表面のコーティングがはげるので注意したい。車のフロントガラスと同じように、撥水スプレーなどを塗布しておくと、雨天の場合でも視界が悪くならず、また汚れも付着しにくくなる。 ヘルメットの耐用年数は、説明書にも記載されているが、使用頻度にかかわらずおおむね3〜4年といわれている。外見上、問題がないように見えても時期が来たら交換した方がよい。また、一度でも転倒などで衝撃を受けたヘルメットは、耐用年数に達していなくても安全は保障できないので、すぐに交換するべきである。
フルフェイスヘルメットは、頭部全体を覆うタイプのヘルメットのことである。オンロード用は、全体に丸みを帯びた形状をしたものが多い。顔面の上部だけが、視界確保のために透明なシールドで覆われる。他のタイプに比べ、重量はあるが、安全性は高い。 フルフェイスヘルメットは、被ったときに頭をふってもずれないくらいぴったりとフィットするものがよい。前後にふってずれるようでは、視界をさえぎり危険である。また万が一の場合にも、頭部をしっかり守ってくれる。かぶる時は、あごひもを左右に引っ張って、多少広げるようにしてかぶる。ほほがきつく感じることもあるが、内装のパットで調節できる場合がある。また、きつめのもののほうが着用しているうちにフィットしてくる。ただし、窮屈すぎて運転に支障をきたさないものを選ぶことも大切だ。 通気口がチンガード(あごの部分)と頭頂部に通気口があり、走行するとヘルメット内に空気が流れる「ベンチレーションシステム」を持ったものもある。通気口の開閉が可能なものもある。夏場にヘルメット内の蒸れを軽減するだけでなく、自分の息でシールドが曇るのを防ぐことができる。 また、購入する際には、シールドの開閉がスムーズかどうかや、走行中の風切り音の程度も確認しておきたい。メーカーによって、形状やデザインにも特徴があるので、機能とともにバイクや好みにあわせて選びたい。
顔の部分は覆わず、頭の部分(額〜後頭部、側頭部)を覆う形状。つばのついたものと、ついていないものがある。耳は覆っているが、前面が解放されているので、外部の音が聞こえやすい。視野も広く開放感がある。また、ヘルメットをかぶったまま会話もしやすく、飲食もできるなど便利である。 しかし万が一、転倒した場合は、フルフェイスと比べると安全性が低い。あごの部分が覆われていないので、あごにけがをする可能性が高い。また、あごひもを締めていても、フルフェイスほど頭部全体をきっちりガードしていないのでぐらついてずれることも考えられる。あごひもは、きつめに締めておきたい。 高速走行をした場合には、シールドの下から風が吹き込み、ヘルメットやシールドの不安定感を感じる場合もあるので、購入前に確認しておきたい。 フルフェイスヘルメットと同じように、ベンチレーションシステムのものもある。頭部前面から後頭部に向けて空気が流れるようになっている。つばのあるタイプのものは、つばの角度が変えられるタイプのものもある。 また、長時間走行の場合にもその重みで首や肩が疲れないように、重心をヘルメットの下部におくなどの工夫がされているものもある。 ジェットヘルメットは、ジェットヘルと呼ばれることもあり、その名前は、ジェット戦闘機の操縦士が着用しているヘルメットの形状から名付けられている。 また、フルフェイスに対しオープンフェイスという呼び方もされる。
頭頂部だけをカバーする、お椀をひっくり返したような半球型のヘルメットである。50cc以下の原付バイクのみでの使用が表示されていても、法律的に規定されているものではないので、大型二輪車で使用しても法的な問題はない。ただし、乗車用ではない安全ヘルメットなど、乗車について安全の規格を満たしていないことが、見た目にも明らかな場合は、罰則が適用されることがある。なにより、実際の安全面において、ハーフ型ヘルメットの使用は不安が大きい。頭部をカバーする面積が小さい分、保護の性能もかなり低いといえる。とくに耳の上部分は、頭蓋骨が比較的薄いので、転倒して側頭部に衝撃を受けた場合、致命傷となりかねない。 また、露出が多い分、外気にふれて涼しそうに見えるが、ベンチレーションシステムなどの機能がないので、ヘルメット内の通気が悪く蒸れることが多い。また、冬場は直接冷たい風を受けて走行するので、顔や耳がちぎれるように冷たくなることを覚悟しておく必要がある。 さらに、ハーフヘルメットのなかでもJIS2000規格のものは、排気量が125cc以下のバイクのみでの使用に限られている。万が一、125cc以上のバイクで使用して事故が発生した場合には、法的な保護を受けられない可能性もある。スタイルだけで判断するのではなく、どのようなヘルメットを着用するのかは、きちんと考慮して選ばなくてはならない。
シールドは、ヘルメットの顔の部分を覆う透明の部品である。視界を確保するためにシールドは、たいへん重要な役割を持っている。色のついていないクリアタイプと、サングラスのように色のついたスモークシールドタイプがある。バイクでの走行中は、直接紫外線にさらされる状況になるので、紫外線カット(UVカット)のシールドを使用するのもよい。ヘルメットのメーカーによって、ヘルメット本体への装着や固定の方法が違うので、シールドのみを交換する場合は、確認が必要である。 フルフェイスヘルメットの場合、シールドをしめた状態では、内部に熱がこもって曇りがちになる。特に冬場は、外気温は冷たく、逆に防寒ウェアなどで身体が温まっていると、ヘルメット内の湿度が高くなり、シールドが曇りやすくなる。曇って視界が遮られるとたいへん危険なので、走行前に対策をしておく必要がある。曇り止めスプレーなどを塗布したり、曇らない素材のシートをシールドに貼るなどの方法がある。最近は、二重構造のシールドなど、曇り止め機能のあるシールドが販売されている。 また、シールドに傷が入ると乱反射によって視界がたいへん悪くなる可能性がある。ハード加工など傷がつきにくい加工が施されているシールドもある。しかし、細かな傷でも乱反射の影響は、視界に大きく影響するので、シールドは丁寧に慎重に扱う必要がある。持ち運び時はもちろん、手入れの際にも十分注意しなくてはならない。
レプリカヘルメットとは、現在や過去においた活躍したライダーのヘルメットを模倣したデザインのヘルメットのことである。ライダー本人が使用するヘルメットは、内装など本人にぴったり合うように作られているので、若干の違いがある。レプリカヘルメットでは、ヘルメットの形状とともに、各ライダー用にデザインしたペイントが施されている。 次に、日本で過去に活躍したライダーの、現在でも人気のあるレプリカヘルメットを挙げておく。 ■高橋国光レプリカ クニさんの愛称で親しまれた高橋国光。1958年から1999年までの42年もの間、トップレーサーとして活躍し続けた。白地に赤の帯が美しい。 ■片山敬済レプリカ プリンスの愛称をもつ片山は、1974年WGPに初挑戦し、1977年には350ccクラスで日本人初優勝という快挙を遂げた。赤がベースのSHOEIのヘルメットにゴールドのカラーリング。 ■平忠彦レプリカ 1982年の映画「汚れた英雄」に出演した頃から使用しているヤマハワークスカラーのアライヘルメットを愛用。赤、黒、白の大胆なカラーリング。平の実力が上昇するとともに「平レプリカ」が発売され爆発的な人気となった。鈴鹿8耐に資生堂TECH21チームとして出場した時には、青色のバージョンも使用していた。
日本における主なヘルメットメーカーは、次のとおりである。 ■株式会社アライヘルメット 東京京橋の帽子屋から始まり、1950年に乗用車用のヘルメットメーカーとして創業した。株式会社新井廣武は、当時の社長の名前をそのままつけた社名である。そのころは、作業用のヘルメットも製造していたが、バイクが好きだった社長がバイク用のヘルメットを自分で作成していたことから、その後乗車用のヘルメット製造を事業として扱うようになった。現在でも、放火帽(消防用ヘルメット)の製造は行っている。1986年にヘルメット事業のみを株式会社アライヘルメットが引き継いだ。 アライヘルメットでは、JIS規格やSNELL規格だけでなく、より厳密なアライ規格を採用しており、より安全性の高いヘルメットを製造する技術を追求している。フルフェイスヘルメットの製造では、ベンチレーションシステムが充実しており、MOTOGPのレーサーには、シェアナンバー1である。 <使用している(していた)主なライダー> フレディ・スペンサー、ケビン・シュワンツ、マイケル・ドゥーハン、ランディ・マモラ、平忠彦、原田哲也、青木宣篤、青山博一・周平、など ■株式会社SHOEI(ショウエイ) ポリエステルの加工メーカーとして1959年に昭栄化工株式会社として創立した。翌1960年より、バイク用ヘルメットの生産を始めた。1998年5月商号を株式会社ショウエイに変更、さらに同年12月株式会社SHOEIと変更した 2007年9月現在、乗車用ヘルメットとして世界シェアナンバー1を誇っている。 <使用している(していた)主なライダー> エディ・ローソン、ワイン・ガードナー、ウェイン・レイニー、片山敬済、伊藤真一など