バイクのライディングテクニック

基本フォーム

バイクにまたがったとき、座る位置は、タンクから握りこぶしひとつ分あればよいといわれる。これは、バイクの重心が、たいていこの辺りにあるからである。重心の近くにライダーの体があると、安定した走行ができる。コーナーやUターンの時など、この位置に座ると車体が軽く感じられる。スタートする前に、この位置に座って、ミラーやハンドル、レバー、ペダルなどを合わせておく。 ハンドルは、脇をしめ過ぎないように、握るというより、軽く持つ感じ。足の内側が、自然とバイクと密着しているとよい。ニーグリップを、常に意識する必要はない。ニーグリップを意識する必要がある場合は、超低速走行をする場合、横風を受けて走行する場合、路面が不安定な場合である。この条件でニーグリップをする場合、肝心なのは、イメージとして内股でタンクをつぶすくらい力を入れることがコツである。これで、バイクと体が一体感を感じることができ、バイクをコントロールすることができる。 ライディンフォームには、以下の4つがある。 ・リーンウィズ(バイクと上半身が一直線上にある。) ・リーンイン(コーナーでバイクより上半身が、イン側になる。) ・リーンアウト(コーナーでバイクより上半身が、アウト側になる。) ・ハングオン(コーナーで、バイクから上半身をイン側にぶら下がるようにずらす。) 一般的には、リーンウィズで十分であるが、走行場所や状況によって、フォームを固定せずに、変化させることも必要である。自分にしっくりあったフォームをみつけ、状況によって変化できる余裕を持つことで、より安全な走行につながる。

コーナリング

カーブやコーナーに進入する際は、まずライン取りを意識することが必要である。そのためには、常にコーナーの出口に視線を向けておくとよい。カーブの角度を予測して、カーブに進入する前にスピードを落としていく。 浅い角度の短いコーナーの場合は、4速までシフトダウンすれば、ゆったりと曲がることができる。もう少し角度があったり、見通しが悪いブラインドコーナーの場合、3速までシフトダウンしておく。90度以上のきついカーブの場合、曲がる直前には、2速まで落としておいた方がよいので、早めにシフトダウンを始める。シフトダウンは、エンジンの回転数が落ちるのを待ってブレーキをかけながら行う。そうすれば、リアタイヤが滑る可能性が低くなる。慣れてくると、カーブの角度にあった速度まで自然にコントロールして、車体を傾けながらカーブを曲がることができるようになる。ハンドル操作だけでコーナーを曲がるのは、難しい場合もあるので、習得しておいた方がよい技術である。 バイクを傾けてコーナーを走行することをバンクという。自転車でも経験する事だが、速度やカーブの角度によって、深くバンクする必要も出てくる。転倒の危険性もあるので、自分のテクニックの範囲を超えないように注意しなければならない。コーナーの出口で、安心して一気にアクセルを開けると、大回りになったり、リアタイヤがスリップする原因にもなるので、油断は禁物である。

減速

減速には、コーナーなどに進入する際にスピードを落とすための減速と、停止するための減速がある。 ・スピードを落とすための減速 コーナーに入る前には、しっかりと減速しておくことが大切である。コーナー直前であわてて短時間で減速するのは危険なので、できるだけ遠くまで目線を向け視野を広くとっておくことが必要である。 減速の仕方は、シフトダウンするのと同時にフロント、リアのブレーキを使って減速する。ブレーキレバーは、速度が高いうちは強く握り、速度が落ちていくにしたがって緩めていかないと、フロントタイヤがロックしてしまう。特に、ウェットな路面においては顕著である。この感覚は、運転経験を重ねることで培うことができるので、しっかり練習することが大切である。 ・停止するための減速 コーナーでの減速と同じく、ブレーキは緩めながら調節することがポイントである。急ブレーキの際は、エンジンブレーキをむやみに使わない方がよい。走行中の変速を変えずに路面とタイヤとの接地感に意識を集中して、走行することが大切である。エンジンブレーキを使うと、シフトダウンによる回転合わせの失敗によってリアタイヤがロックしたり、チャタリング(車体が上下に弾むこと)が起こったりして、転倒の危険が増大する。

加速

バイクの走行で加速がうまくいかない原因のひとつには、シフトチェンジがうまくいかない、ということがある。シフトアップのためにクラッチを切る前に、アクセルをわずかに戻してみると、うまく回転数をあわせることができる。回転数は、車種によっても違うので、自分のバイクにあったタイミングを探さなくてはならない。ただし、シフトアップの際に1速で引っ張りすぎると、回転が上がり過ぎるので、2、3速と早めにシフトアップしていく方がよい。2、3速であっても回転数の高い状態で走行を続けると、エンジンへの負担が大きく、焼きついたり重大な損傷を引き起こすことになる。タコメーターのレッドゾーン(加回転域)まで回転数が上がらないよう、十分注意が必要である。3速までは素早くシフトアップし、あとは、道路や走行の状況に応じてシフトチェンジを行う。 また、クラッチ操作をする時は、クラッチレバーをしっかりと長く握リすぎない。一瞬軽く握って切るのがポイントだ。アクセルを開ける時は、クラッチをつなぐと同時に開ける。そうすれば、加速がスムーズにできる。 加速する時の視線は、遠くであれ近くであれ、一点に集中していると危険である。できる限り広範囲に視野を保っておくことで危険を素早く察知し、回避することができる。高速の場合は、特に視野の広さを意識したい。

Uターン

Uターンは、初心者には難しい操作である。転倒しやすいので十分注意が必要である。右にUターンする場合、最初からハンドルを右に切っておく。視線は進行方向に向けておく。1速からクラッチを戻していく。このとき、不安な人はアイドリングをやや高めの回転数に保っておくと、練習しやすい。場合によっては、アクセルは一定に保っておきリアブレーキで速度を調節するというやり方もある。走行中からUターンに入る場合、コーナーへ進入前のブレーキは繊細に操作することが必要である。早めにクラッチを操作することによって速度を落としておく。クラッチは、半クラッチ状態で操作するので、人差指と中指の2本の指だけでの方が扱いやすい。4本でしっかり握ってしまうと、ハンドルに力が入ってしまい旋回しにくいことがある。アクセルの操作を誤ったときに備えて、クラッチでスピードをコントロールできるようにしておかなくてはならない。スピードを抑え過ぎると曲がりにくい場合もあるが、安定したUターンができる速度を保つことが大切である。 低速で行うUターン中のフォームは、普通のコーナーのように遠心力を利用して車体を傾けて曲がるのではないので、リーンアウト(上体を外側におく)がよい。トライアルバイクなどでは、外側のステップにしっかりと体重をかけて、内側の足はフレーム挟むようにしておくとよい。Uターンをする時は、ブレーキ、アクセル、クラッチ、ハンドルとすべてに微妙な操作が必要となるので、慎重に練習を行った方がよい

雨の日の走行

雨が降った日に、まず注意しなくてはならないのは、路面の状況である。路面が雨でぬれることによって、滑りやすくなるのは周知のことである。コーナーや停止する時だけでなく、走行中にも影響があるので、気をつけたい。 特に注意したいのは、マンホールのふた、側溝のグレーチング、工事現場などにひかれている鉄板、センターラインや横断歩道などの道路標示など。できる限り避けて走行することが望ましい。また、交通量の多い道路や大型トラックが多く通行する道路などでは、轍(わだち)になっている道路がある。こういったところも水がたまっていると、滑りやすいので注意が必要である。すり抜けする場合も、道路の路肩のほうに、雨水がたまっていたり、雨水でゴミやほこりが浮いていたりして危険である。 高速で走行する場合は、ハイドロプレーニング現象が起こる可能性もあるので、さらに注意しなくてはならない。ハンドルがとられ車体を操作できなくなる。パニック状態になってしまうと非常に危険である。そのような状況にならないよう、慎重な運転が必要だ。コーナーなどでもタイヤが路面と接地するように、できるだけ傾いている時間を少なくし、車体を立ててゆっくりとコーナーに入るようにしたい。 雨天の場合は、視界も、晴天の場合とは大きく違うことを意識しなくてはならない。ミラーやヘルメットのシールドに水滴がついて見えにくいだけでなく、シールドが曇ったり、夜間には乱反射をおこして、非常に見えにくくなる。シールドには、撥水や曇り止めのスプレーなどを使用するなど、可能な限り視界を確保できるような工夫をしておくことも重要である。 また、他の車に対しても、ライトをつけるのはもちろんのこと、目立つレインウェアを着用するなどして、自分の存在をアピールしておくのも、安全を守る方法である。

峠道の走行

上り坂のコーナーでは、ブレーキもよく効き、自然と後輪加重となるので、アクセルワークで後輪にトラクションをかければ、安全に走行することができる。基本的に、現代のバイクは、後輪加重の方がコントロールがしやすい設計となっている。以前のバイクに比べ、曲がりにくさを意識することなくハンドル操作をすることができる。 下り坂の場合は、上りに比べて加速がつきやすくフロント加重になるので、はるかにコントロールが難しくなる。ブレーキング一つとってみても、上りでのブレーキングは、フロントとリアの加重差がつきにくいが、下りでは圧倒的にフロント加重となる。よって、フロントブレーキへの負担が極端に増大するため、制動距離も長くなる。また、リアタイヤのトラクションが減少するため、リアブレーキ使用によるリアタイヤロックが頻発する危険がある。コーナー入口までの減速が十分できずに、曲がるときに大きく膨らみすぎる可能性も高い。 万が一タイヤのロックなどにより、転倒した場合のリスクは、下り坂のほうが大きく危険である。また、速度が出ている分、車体をコントロールするのも下り坂の方が難しい。そのことを念頭において、自分のペースで慎重に運転することが大切である。

タンデム走行

平成17年から、一部を除いた高速道路でバイクの二人乗りが解禁された。20歳以上で、大型二輪免許または普通二輪免許を取得して通算3年以上のライダーに限る。高速道路での二人乗り走行が可能になったことで、タンデム走行をより楽しめるようになった。せっかくのタンデム走行なので、同乗者にも安心してもらえるライディングで楽しみたい。 そのために、まず大切なのは、お互いのコミュニケーションの取り方である。バイクの場合ヘルメットをかぶっていて、会話が十分に聞き取れない可能性もあるので、話しかける際にはライダーは、同乗者のひざを、同乗者はライダーの肩をたたくなどしてから、声をかけるとよい。 バイクへの乗り方一つとっても、同乗者が乗る場合には、前触れもなくタンデムステップに足をかけるのではなく、ライダーの合図を待って一声かけて乗るようにしたい。一人の時とは違う加重がかかるため、バランスを崩して走行する前から転倒するようなことにもなりかねないからである。このとき、前後どちらかのブレーキをかけておく。 走行中、同乗者の姿勢は、ライダーの腰を足ではさみ、手はライダーのベルトまたはタンデムシートのうしろにあるタンデムバーをしっかりとつかむ。加速、減速の際は、同乗者を怖がらせないように慎重に行うようにする。コーナーでは、同乗者はライダーの体の傾きに合せないと、事故の原因になる。ライダーと息を合わせるように心がけることが大切である。 走行後、バイクから降りるとき、マフラーが高温になっており、触れるとやけどする可能性があるので、はじめてタンデムする同乗者には、ライダーが一言注意を促すとよい。

走行ライン

車体の小さいバイクでは、安全に走行するためには道路のどこを走ればいいのかも、重要なポイントである。まずは、自分の走行している速度で、自分の思い通りの走行ラインを描けるようバイクをコントロールできているかが、問題である。無理な速度を出していては、自分の思い描いた走行ラインを走ることはできないであろう。最初のうちは、慣れるまで意識して抑えた一定の速度で、思った通りの走行ラインを走ってみることから始めたい。 この場合、走行ラインは平面的な線としてではなく、勾配やバンク角度、微妙な路面のでこぼこ、マンホールや見通しの悪さなど、さまざまな対応できるように考えなくてはならない。一つとして同じ路面はないので、どんな場合にも思い通りのコントロールができることが大切である。 街中での直進路では、できるだけ中央を走行した方が危険が少ない。あまり左端によりすぎると、車が並んできたり、カーブミラーの死角に入って対向車に気づかれにくい場合がある。公道でのライン取りは、何より万が一の状況にも対応できるように、安全なスペースを確保することが第一である。コーナーなどで、ラインを割るようなショートカットをすると、たいへん危険である。基本的には、センター走行を心がけ、臨機応変に丁寧に走行することが望ましい。

特殊なブレーキングテクニック

バイクは、コーナーを曲がるとき、挙動がスムーズにいかないことがある。その理由としては、フロントタイヤとリアタイヤで同じライン上を通るわけではないこと、チェーンに、遊び(たるみ)があることがあげられる。 その2つの点があるので、特に低速走行でのコーナリングは不安定になる。これを解消するために、ベテランライダーたちがよく使うテクニックとして、リアブレーキを使う方法がある。コーナリングの最中に、ブレーキングはしない方がよいとされているが、実はリアブレーキを軽くかけてリアのトラクションを増しておくと低速でコーナリングする際ののぎくしゃくした挙動が、抑えられるのである。街中での超低速走行時に、このテクニックを使うと、非常にスムーズにバイクをコントロールすることができることを実感できるであろう。 リアブレーキをコーナリング中に常にかけていると、アクセルを開けた時に必要な分だけリアタイヤに仕事量を与え、アクセルを緩めた時には無駄なバイクの挙動を抑えることができるのである。もちろん、リアブレーキを踏み込みすぎれば、リアタイヤはロックしてしまい、転倒の危険性がある。しかし、このテクニックをマスターすると、どんなビッグバイクで低速走行したとしても、コーナーで自信を持って操ることができるのである。ただし、初心者には難しいテクニックなので、繰り返し練習することが必要である。

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